ったと恨めしく思わないだろうか、こんなことを思うと胸がせき上がってくるようで、頭も痛く、からだには発熱も感ぜられて苦しい。こうして自分も死んでしまうのであろうと思われるのである。八時ごろになっても源氏が起きぬので、女房たちは心配をしだして、朝の食事を寝室の主人へ勧めてみたが無駄《むだ》だった。源氏は苦しくて、そして生命《いのち》の危険が迫ってくるような心細さを覚えていると、宮中のお使いが来た。帝《みかど》は昨日《きのう》もお召しになった源氏を御覧になれなかったことで御心配をあそばされるのであった。左大臣家の子息たちも訪問して来たがそのうちの頭中将《とうのちゅうじょう》にだけ、
「お立ちになったままでちょっとこちらへ」
と言わせて、源氏は招いた友と御簾《みす》を隔てて対した。
「私の乳母《めのと》の、この五月ごろから大病をしていました者が、尼になったりなどしたものですから、その効験《ききめ》でか一時|快《よ》くなっていましたが、またこのごろ悪くなりまして、生前にもう一度だけ訪問をしてくれなどと言ってきているので、小さい時から世話になった者に、最後に恨めしく思わせるのは残酷だと思って、訪
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