なるはずの几帳《きちょう》なども今日の暑さのせいで垂れは上げて棹《さお》にかけられている。灯《ひ》が人の座に近く置かれていた。中央の室の中柱に寄り添ってすわったのが恋しい人であろうかと、まずそれに目が行った。紫の濃い綾《あや》の単衣襲《ひとえがさね》の上に何かの上着をかけて、頭の恰好《かっこう》のほっそりとした小柄な女である。顔などは正面にすわった人からも全部が見られないように注意をしているふうだった。痩《や》せっぽちの手はほんの少しより袖《そで》から出ていない。もう一人は顔を東向きにしていたからすっかり見えた。白い薄衣《うすもの》の単衣襲に淡藍《うすあい》色の小袿《こうちぎ》らしいものを引きかけて、紅《あか》い袴《はかま》の紐《ひも》の結び目の所までも着物の襟《えり》がはだけて胸が出ていた。きわめて行儀のよくないふうである。色が白くて、よく肥えていて頭の形と、髪のかかった額つきが美しい。目つきと口もとに愛嬌《あいきょう》があって派手《はで》な顔である。髪は多くて、長くはないが、二つに分けて顔から肩へかかったあたりがきれいで、全体が朗らかな美人と見えた。源氏は、だから親が自慢にしている
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