のだと興味がそそられた。静かな性質を少し添えてやりたいとちょっとそんな気がした。才走ったところはあるらしい。碁が終わって駄目石《だめいし》を入れる時など、いかにも利巧《りこう》に見えて、そして蓮葉《はすっぱ》に騒ぐのである。奥のほうの人は静かにそれをおさえるようにして、
「まあお待ちなさい。そこは両方ともいっしょの数でしょう。それからここにもあなたのほうの目がありますよ」
などと言うが、
「いいえ、今度は負けましたよ。そうそう、この隅の所を勘定しなくては」
指を折って、十、二十、三十、四十と数えるのを見ていると、無数だという伊予の温泉の湯桁《ゆげた》の数もこの人にはすぐわかるだろうと思われる。少し下品である。袖で十二分に口のあたりを掩《おお》うて隙見男《すきみおとこ》に顔をよく見せないが、その今一人に目をじっとつけていると次第によくわかってきた。少し腫《は》れぼったい目のようで、鼻などもよく筋が通っているとは見えない。はなやかなところはどこもなくて、一つずついえば醜いほうの顔であるが、姿態がいかにもよくて、美しい今一人よりも人の注意を多く引く価値があった。派手《はで》な愛嬌《あいき
前へ
次へ
全16ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング