源氏物語
空蝉
紫式部
與謝野晶子訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)馴《な》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)もう一度|逢《あ》える

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
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[#地から3字上げ]うつせみのわがうすごろも風流男に馴《な》
[#地から3字上げ]れてぬるやとあぢきなきころ(晶子)

 眠れない源氏は、
「私はこんなにまで人から冷淡にされたことはこれまでないのだから、今晩はじめて人生は悲しいものだと教えられた。恥ずかしくて生きていられない気がする」
 などと言うのを小君《こぎみ》は聞いて涙さえもこぼしていた。非常にかわいく源氏は思った。思いなしか手あたりの小柄なからだ、そう長くは感じなかったあの人の髪もこれに似ているように思われてなつかしい気がした。この上しいて女を動かそうとすることも見苦しいことに思われたし、また真から恨めしくもなっている心から、それきり言《こと》づてをすることもやめて、翌朝早く帰って行ったのを、小君は気の毒な物足りないことに思った。女も非常にすまないと思
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