4]の大熱は、それだけ彼女の身を去って彼女に清涼を与えるわけになった。我に射掛くる利箭《りせん》の毒は、それだけ彼女の懐を出でて彼女の※[#「匈/月」、946−下−14]裏《きょうり》を清浄《しょうじょう》にすることになった。我を切り、突き、※[#「宛+りっとう」、第4水準2−3−26]らんとする一切|兇悪《きょうあく》の刀槍剣戟《とうそうけんげき》の類は、我に触れんとするに当って、其の刃頭が皆|妙蓮華《みょうれんげ》の莟《つぼみ》となって地に落つるを観た。施行《せぎょう》の食《し》は彼の我に与うるによって彼の檀波羅密《だんはらみつ》を成《じょう》じ、我の彼に受けて酬《むく》いるに法を与うるを以てするの故に、我の檀波羅密を成じ、速疾得果の妙用を現ずるを観た。寂照は「あな、とうと」と云いて端然《たんねん》と食《し》を摂《と》り、自他平等|利益《りやく》の讃偈《さんげ》を唱えて、しずかに其処を去った。戒波羅密や精進波羅密、寂照は愈々《いよいよ》道に励むのみであった。彼女は其後|何様《どう》なったかは伝わって居らぬが、恐らくは当時の有識階級の女子であったから、多分は仏縁に引かれて化度《けど》
前へ
次へ
全120ページ中99ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング