る。本来を云えば此の優美でも円満でも清浄でも無い娑婆世界を洗いかえそうというのが頭陀行で、そのために仏子となって仏法に帰依し、自分は汚《むさ》い色目も分らぬ襤褸《らんる》を着て甘んじ、慾得ずくからの職業産業から得るのでない食物を食って足れりとし、他を排しおのれを護る住宅でもないところに身を安んじ、そして一念ただ清涼無熱悩の菩提に帰向し了《おわ》らんとするのが頭陀行である。其の頭陀行の中《うち》の常乞食は、一には因縁|所生《しょしょう》の吾が身を解脱に至らしむるまでの経程を為すのである、二には我に食を施す者をして仏宝法宝僧宝の三宝に帰依せしむ、三には我に食を施すものをして悲心を生ぜしむ、四には我に我心無し、仏の教行に順ずるなり、五には満ち易く養い易く、安易の法なり、六には諸悪の根幹たる※[#「りっしんべん+喬」、第3水準1−84−61]慢《きょうまん》を破る、七には最卑下の法を行ずるに因りて最頂上相の感得を致す、八には他の善根を修する者の倣《なら》うことを生ず、九には男女大小の諸《もろもろ》の縁事を離る、十には次第に乞食《こつじき》するが故に、衆生の中《うち》に於て平等|無差別《むしゃべ
前へ 次へ
全120ページ中95ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング