、第3水準1−84−77]《むし》りおおせたから、おろさせると、刀《とう》に従って血はつぶつぶと出で、堪えがたい断末間の声を出して死んで終った。炒《あぶ》り焼きして心見よ、と云うと、情無い下司男《げすおとこ》は、其言葉通りにして見て、これはことの外に結構でござる、生身《いきみ》の炒《あぶ》り焼きは、死したるのよりも遥かに勝りたり、などと云った。いずれは此世の豪傑共である。定基はつくづくと見て居たが、終《つい》に堪えかねて、声を立てて泣き出して、自分の豪傑性を否認して終《しま》って、三河守も何もあらばこそ、衣袍《いほう》取繕う遑《いとま》も無く、半天の落葉ただ風に飛ぶが如く国府を後《あと》にして都へ出てしまった。
 勿論官職位階は皆辞して終った。疑い訝《いぶか》る者、引留める者も有ったには相違無い、一族|朋友《ほうゆう》に非難する者も有ったには相違無い。が、もう無茶苦茶無理やり、何でも構わずに非社会的の一個のただの生物《いきもの》になって仕舞った。犠牲を献《ささ》げるのを正しいこととし、犠牲を献げるのを怠るごときは、神に対する甚しい非礼とし、不道とし、大悪とする。犠牲を要求するのは神の権
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