っているのだから、家の内の斉《ととの》わないで、妻を去るに至るの何のということは、よくよくの事でなければ、一家一門に取って取分け世間の非難を被って、非常に不利であることを云いもしたろう。これに対しても一方は又黙っていたろう。七出《しちしゅつ》の目《もく》に就いても言議に及んだことであろう。七出というのは、子無きが一、淫佚《いんいつ》が二、舅姑《きゅうこ》に事《つか》えざるが三、口舌《くぜつ》多きが四、盗窃が五、妬忌《とき》が六、悪疾《あくしつ》が七である。これに対しては定基の方からは、口舌、妬忌の二条を挙げて兎角を云うことも出来るわけだが、定基今差当って必ずしも妻を出そうと主張しているのでも無いから、やはり何も云わず黙っていたろう。何を云っても黙って居られる。自分も妻の右衛門同様、相手にされずに黙過されるに至っては匡衡も堪《こら》えきれなくなったろう。遂に力寿が非常に美《よ》い女だということが定基|耽溺《たんでき》の基だというのに考えが触れて、美色ということに鉾《ほこ》が向いたろう。妲己《だっき》や褒※[#「女+以」、第3水準1−15−79]《ほうじ》のような妖怪《ばけもの》くさい恐ろ
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