門は或日定基にむかって、美しいのみの力寿に溺《おぼ》るることの宜《よ》からぬことを説き、妻をやさしくあつかうべきことを、説きすすめたのである。実にそれは、言葉にそつは無く、情理兼ね到って、美しくもまたことわりせめて上手に説いたことであったろう。元来財力あるものは財を他《ひと》に貸して貧者を扶《たす》けることが出来る、才力ある者は才を他に貸して拙者を助けることが出来、自然と然様《そう》いうことの生ずるのが世の自然のありさまである。それで赤染右衛門ほどになると、自分の子の挙周が恋に落ちていた時になって、恋には最大武器である和歌を挙周に代って作ってやって、それを相手の女に寄せさせたことが数々《しばしば》有った、実に頼もしい有難いお母《っか》さんで、坊ちゃん挙周はお蔭で何程《いくら》好い男になっていたか知れない。其歌は今に明らかに残っているから、嘘でも何でもない。ところが相手の女もまだ若くて、中々赤染右衛門の代作の手はしの利いている歌に返歌は出来なかったが、幸に其の姉分に和泉式部という偉い女歌人があったから、それに頼んで答をして貰った。和泉式部の代作の恋の歌も今確存しているのである。双方手だれ
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