26]《えんせん》、などと見えすいた好い加減なことを答えるよりは面倒だから、其儘《そのまま》にして置こう。美人だったか、醜婦だったかも不明だが、先ず十人並の人だったとして置いて差支えは無かろうが、其の気質だけは温和で無くて、強《きつ》い方だったろうことは、連添うた者と若い身そらで争い別れをしたことでも想いやられる。此女が定基に対して求めたことは無論|恋敵《こいがたき》の力寿を遠ざけることであったろうが、定基は力寿に首ったけだったから、それを承知すべくは無いし、又|直截《ちょくせつ》な性質の人だったから、吾《わ》が妻に対することでは有り、にやくやに云《いい》紛《まぎ》らして、※[#「施」の「方」に代えて「てへん」、第3水準1−84−74]泥《たでい》滞水の挨拶を以て其場を済ませて置くというようなことも仕無かったろうから、次第次第に夫婦の間は険悪になっていったであろう。ところが、飢えたる者は人の美饌《びせん》を享《う》くるを見ては愈々飢の苦《くるしみ》を感ずる道理がある。飽《あ》ける者は人の饑餓《きが》に臨めるを見ては、余計に之を哀れむの情を催す道理がある。ここに定基に取っては従兄弟同士で
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