水九の三、菜園八の二、芹田《きんでん》七の一、とあるので全般の様子は想いやられるが、芹田七の一がおもしろい。池の中の小島の松、汀《みぎわ》の柳、小さな柴橋、北戸の竹、植木屋に褒められるほどのものは何一ツ無く、又先生の眉を皺《しわ》めさせるような牛に搬《はこ》ばせた大石なども更に見えなくても、蕭散《しょうさん》な庭のさまは流石に佳趣無きにあらずと思われる。予行年|漸《ようや》く五旬になりなんとして適々《たまたま》少宅有り、蝸《か》其舎に安んじ、虱《しらみ》其の縫を楽む、と言っているのも、けちなようだが、其実を失わないで宜い。家主、職は柱下に在りと雖《いえど》も、心は山中に住むが如し。官爵は運命に任す、天の工|均《あまね》し矣。寿夭《じゅよう》は乾坤《けんこん》に付す、丘《きゅう》の祷《いの》ることや久し焉。と内力少し気※[#「陷のつくり+炎」、第3水準1−87−64]《きえん》を揚げて居るのも、ウソでは無いから憎まれぬ。朝に在りて身暫く王事に随《したが》い、家にありては心永く仏那《ぶつな》に帰す、とあるのは、儒家としては感服出来ぬが、此人としては率直の言である。夫《か》の漢の文皇帝を異代
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