みやげ》にと心憎き愛嬌《あいきょう》言葉|商買《しょうばい》の艶《つや》とてなまめかしく売物に香《か》を添ゆる口のきゝぶりに利発あらわれ、世馴《よな》れて渋らず、さりとて軽佻《かるはずみ》にもなきとりなし、持ち来《きた》りし包《つつみ》静《しずか》にひらきて二箱三箱差し出《いだ》す手《て》つきしおらしさに、花は余所《よそ》になりてうつゝなく覗《のぞ》き込む此方《こなた》の眼《め》を避けて背向《そむ》くる顔、折から透間《すきま》洩《も》る風《かぜ》に燈火《ともしび》動き明らかには見えざるにさえ隠れ難き美しさ。我《が》折《お》れ深山《みやま》に是《これ》は何物。
[#改ページ]
第二 如是体《にょぜたい》
粋《すい》の羯羅藍《かららん》と実《じつ》の阿羅藍《あららん》
見て面白き世の中に聞《きい》て悲しき人の上あり。昔は此《この》京《きょう》にして此|妓《こ》ありと評判は八坂《やさか》の塔より高く其《その》名は音羽《おとわ》の滝より響きし室香《むろか》と云《い》える芸子《げいこ》ありしが、さる程に地主権現《じしゅごんげん》の花の色|盛者《しょうじゃ》必衰の理《こ
前へ
次へ
全107ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング