ょう》初めて綱位《こうい》を受《う》け、中々《なかなか》賎《いやし》まるべき者にあらず、西洋にては声なき詩の色あるを絵と云い、景なき絵の魂|凝《こり》しを彫像と云う程|尊《たっと》む技を為《な》す吾《われ》、ミチエルアンジロにもやはか劣るべき、仮令《たとい》令嬢の夫たるとも何の不都合あるべきとは云え、蝸牛《ででむし》の角立《つのだて》て何の益なし、残念や無念やと癇癪《かんしゃく》の牙《きば》は噛《か》めども食付《くいつく》所なければ、尚《なお》一段の憤悶《ふんもん》を増して、果《はて》は腑甲斐《ふがい》なき此身|惜《おし》からずエヽ木曾川の逆巻《さかまく》水に命を洗ってお辰見ざりし前に生れかわりたしと血相|変《かわ》る夜半《よわ》もありし。
下 化城諭品《けじょうゆぼん》の諫《いさめ》も聴《きか》ぬ執着《しゅうじゃく》
痩《やせ》たりや/\、病気|揚句《あげく》を恋に責《せめ》られ、悲《かなしみ》に絞られて、此身細々と心|引立《ひきたた》ず、浮藻《うきも》足をからむ泥沼《どろぬま》の深水《ふかみ》にはまり、又は露多き苔道《こけみち》をあゆむに山蛭《やまびる》ひいやりと
前へ
次へ
全107ページ中69ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング