くりもの》親御からなさるゝは至当の事、受取らぬと仰《おっしゃ》ったとて此儘《このまま》にはならず、どうか条理の立様《たつよう》御分別なされて、枉《まげ》ても枉《まげ》ても、御受納と舌《した》小賢《こざか》しく云迯《いいにげ》に東京へ帰ったやら、其後|音沙汰《おとさた》なし。さても浮世や、猛《たけ》き虎《とら》も樹《き》の上の猿《さる》には侮られて位置の懸隔を恨むらん、吾《われ》肩書に官爵あらば、あの田原の額に畳の跡深々と付《つけ》さし、恐惶謹言《きょうこうきんげん》させて子爵には一目置《いちもくおい》た挨拶《あいさつ》させ差詰《さしづめ》聟殿《むこどの》と大切がられべきを、四民同等の今日とて地下《じげ》と雲上《うんじょう》の等差《ちがい》口惜し、珠運を易《やす》く見積って何百円にもあれ何万円にもあれ札《さつ》で唇にかすがい膏打《こううつ》ような処置、遺恨千万、さりながら正四位《しょうしい》何の某《なにがし》とあって仏師彫刻師を聟《むこ》には為《し》たがらぬも無理ならぬ人情、是非もなけれど抑々《そもそも》仏師は光孝《こうこう》天皇|是忠《これただ》の親王等の系に出《いで》て定朝《じょうち
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