か》は孫の手に頼めじゃ、なよなよとした其肢体《そのからだ》を縛ってと云うのでない注文ならば天窓《あたま》を破《わ》って工夫も仕様《しよう》が一体まあどうした訳《わけ》か、強《しい》て聞《きく》でも無《なけ》れど此儘《このまま》別れては何とやら仏作って魂入れずと云う様な者、話してよき事ならば聞《きい》た上でどうなりと有丈《あるたけ》の力喜んで尽しましょうと云《いわ》れてお辰《たつ》は、叔父《おじ》にさえあさましき難題《なんだい》云い掛《かけ》らるゝ世の中に赤の他人で是《これ》ほどの仁《なさけ》、胸に堪《こた》えてぞっとする程|嬉《うれ》し悲しく、咽《む》せ返りながら、吃《きっ》と思いかえして、段々の御親切有り難《がとう》は御座りまするが妾《わたくし》身の上話しは申し上ませぬ、否《いい》や申さぬではござりませぬが申されぬつらさを御《お》察し下され、眼上《めうえ》と折り合《あわ》ねば懲《こ》らしめられた計《ばかり》の事、諄々《くどくど》と黒暗《くらやみ》の耻《はじ》を申《もうし》てあなたの様な情《なさけ》知りの御方に浅墓《あさはか》な心入《こころいれ》と愛想《あいそ》つかさるゝもおそろし、さ
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