ず、眉《まゆ》濃からずして末|秀《ひい》で、眼に一点の濁りなきのみか、形状《かたち》の外《ほか》におのずから賎《いや》しからぬ様|露《あらわ》れて、其《その》親切なる言葉、そもや女子《おなご》の嬉《うれ》しからぬ事か。
中 仁《なさけ》はあつき心念《しんねん》口演《くえん》
身を断念《あきらめ》てはあきらめざりしを口惜《くちおし》とは云《い》わるれど、笑い顔してあきらめる者世にあるまじく、大抵《たいてい》は奥歯|噛《か》みしめて思い切る事ぞかし、到底《とても》遁《のが》れぬ不仕合《ふしあわせ》と一概に悟られしはあまり浮世を恨みすぎた云い分、道理には合《あ》っても人情には外《はず》れた言葉が御前《おまえ》のその美しい唇《くちびる》から出るも、思えば苦しい仔細《しさい》があってと察しては御前の心も大方は見えていじらしく、エヽ腹立《はらだた》しい三世相《さんぜそう》、何の因果を誰《たれ》が作って、花に蜘蛛《くも》の巣お前に七蔵《しちぞう》の縁じゃやらと、天燈様《てんとうさま》まで憎うてならぬ此《この》珠運《しゅうん》、相談の敵手《あいて》にもなるまいが痒《かゆ》い脊中《せな
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