はんかた、※[#「※」は「來+のぶん+したごころ」、第3水準2−12−72、164−11]《なまじ》に賢立《かしこだ》てして我が好みのまゝに作らせんよりは却て可かるべしと思ひしかば、いや、我猶釣の道に昧ければ我が好みを云ふべくもあらず、たゞ此家《こゝ》の品の必ず佳かるべきを知りて来れるものなれば、一も二も無く此家の主人の君の言に従ひて、その良しとするものを良しとし其の良からずとするものを良からずとせん、二本ありとならば其の一本を択みて与へよ、価の高き低きは問ふところにあらずと云ひ出づれば、主人も聊か笑を含みて、然《さ》らば此の方を召し玉へ、我が口よりは如何で誇らん、只眼あらん人は必ず此竿を知るべし、君もまた用ゐ玉ひて後、価の君を欺かざるを知り玉ふべしと云ひつゝ、一本の竿を我が手にわたす。受け取りてつく/″\見るに、竿に具ふべきかど/\の中にても重きかどの一つなる節※[#「※」は「二の字点」、第3水準1−2−22、165−1]の配りもいとよく斉ひて、本より末に至るに随ひ漸く其間|蹙《しゞ》まり、竹の育ちすらりとして捩れも無く癖も無く、特に穂竿の剛《かた》からず弱からずして靭《しな》やかに
前へ 次へ
全25ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング