、辛き目に逢うは知れた事、世上に其|例《ためし》いくらも有り。又後暗いことするほどの才ある女が、其迷いが募っては何ぞの折に夫を禍するに至ることも世に多きためし。それがしが彼《かの》人《ひと》に証を以て告口せずに置かば、彼人の行末も空恐ろしく、又それがしは悪を助けて善を助けぬ外道魔道の眷属《けんぞく》となる。此の外道魔道の眷属が今の世には充ち満ちている。公方を追落し、管領を殺したも、皆かかる眷属共の為たことである。何事も知らぬ顔して、おのが利得にならぬことは指一ツ動かさず、ぬっぺりと世を送りくさって、みずから手は下さねど、見す見す正道の者の枯れ行き、邪道の者の栄え行くのを見送っている、癇《かん》に触る奴めらが世間一杯。一々たたき斬《き》って呉れたい虫けらども。其虫けらにそれがしがなろうや。もとよりとげとげしい今の此世、それがしが身の分際では、朝起きれば夕までは生命ありとも思わず、夜を睡れば明日《あした》まであたたかにあろうとも思わず、今すぐここに切死にするか、切り殺さるるか、と突詰め突詰めて時を送っている。殊更此頃は進んでも鎗《やり》ぶすまの中に突懸り、猛火の中にも飛入ろう所存に燃えてお
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