雪たたき
幸田露伴

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)焚《や》かれ

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)其|窟《あな》を

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)心が※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]《もが》かれて
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   上

 鳥が其巣を焚《や》かれ、獣が其|窟《あな》をくつがえされた時は何様《どう》なる。
 悲しい声も能《よ》くは立てず、うつろな眼は意味無く動くまでで、鳥は篠《ささ》むらや草むらに首を突込み、ただ暁の天《そら》を切ない心に待焦るるであろう。獣は所謂《いわゆる》駭《おどろ》き心になって急に奔《はし》ったり、懼《おそ》れの目を張って疑いの足取り遅くのそのそと歩いたりしながら、何ぞの場合には咬《か》みつこうか、はたきつけようかと、恐ろしい緊張を顎骨《あごぼね》や爪の根に漲《みなぎ》らせることを忘れぬであろう。
 応仁、文明、長享、延徳を歴《へ》て、今は明応の二年十二月の初である。此頃は上《かみ》は大将軍や管領
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