ちょうな》ふりあげて木を伐《き》るときは満身の力をそれに籠《こ》め、一枚の図をひく時には一心の誠をそれに注ぎ、五尺の身体こそ犬鳴き鶏《とり》歌い権兵衛が家に吉慶《よろこび》あれば木工右衛門《もくえもん》がところに悲哀《かなしみ》ある俗世に在《あ》りもすれ、精神《こころ》は紛たる因縁に奪《と》られで必死とばかり勤め励めば、前《さき》の夜源太に面白からず思われしことの気にかからぬにはあらざれど、日ごろののっそりますます長じて、はやいずくにか風吹きたりしぐらいに自然軽う取り做《な》し、やがてはとんと打ち忘れ、ただただ仕事にのみかかりしは愚かなるだけ情に鈍くて、一条道《ひとすじみち》より外へは駈《か》けぬ老牛《おいうし》の痴に似たりけり。
 金箔《きんぱく》銀箔|瑠璃《るり》真珠|水精《すいしょう》以上合わせて五宝、丁子《ちょうじ》沈香《じんこう》白膠《はくきょう》薫陸《くんろく》白檀《びゃくだん》以上合わせて五香、そのほか五薬五穀まで備えて大土祖神《おおつちみおやのかみ》埴山彦神《はにやまひこのかみ》埴山媛神《はにやまひめのかみ》あらゆる鎮護の神々を祭る地鎮の式もすみ、地曳《じび》き土取り故
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