銀釵《かんざし》にお前そのよに酢ばかり飲んでを稽古する馬鹿騒ぎの中で、一了簡あり顔の政が木遣《きやり》を丸めたような声しながら、北に峨々《がが》たる青山《せいざん》をと異《おつ》なことを吐き出す勝手|三昧《ざんまい》、やっちゃもっちゃの末は拳《けん》も下卑て、乳房《ちち》の脹《ふく》れた奴が臍の下に紙幕張るほどになれば、さあもうここは切り上げてと源太が一言、それから先はどこへやら。

     其二十三

 蒼※[#「顫のへん+鳥」、第3水準1−94−72]《たか》の飛ぶ時よそ視《み》はなさず、鶴なら鶴の一点張りに雲をも穿《うが》ち風にも逆《むか》って目ざす獲物の、咽喉仏《のどぼとけ》把攫《ひっつか》までは合点せざるものなり。十兵衛いよいよ五重塔の工事《しごと》するに定まってより寝ても起きてもそれ三昧《ざんまい》、朝の飯|喫《く》うにも心の中では塔を噬《か》み、夜の夢結ぶにも魂魄《たましい》は九輪の頂を繞《めぐ》るほどなれば、まして仕事にかかっては妻あることも忘れ果て児《こ》のあることも忘れ果て、昨日《きのう》の我を念頭に浮べもせず明日《あす》の我を想いもなさず、ただ一[#(ト)]釿《
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