くも一二度ついに三度めで無残至極に齟齬《くいちが》い、いと物静かに言葉を低めて、十兵衛殿、と殿の字を急につけ出し叮嚀《ていねい》に、要らぬという図はしまいましょ、汝《そなた》一人で建つる塔定めて立派にできようが、地震か風のあろう時|壊《こわ》るることはあるまいな、と軽くは云えど深く嘲ける語《ことば》に十兵衛も快よからず、のっそりでも恥辱《はじ》は知っております、と底力味ある楔《くさび》を打てば、なかなか見事な一言じゃ、忘れぬように記臆《おぼ》えていようと、釘《くぎ》をさしつつ恐ろしく睥《にら》みて後は物云わず、やがてたちまち立ち上って、ああとんでもないことを忘れた、十兵衛殿ゆるりと遊んでいてくれ、我は帰らねばならぬこと思い出した、と風のごとくにその座を去り、あれという間に推量勘定、幾金《いくら》か遺してふいと出つ、すぐその足で同じ町のある家が閾《しきい》またぐや否、厭だ厭だ、厭だ厭だ、つまらぬくだらぬ馬鹿馬鹿しい、ぐずぐずせずと酒もて来い、蝋燭《ろうそく》いじってそれが食えるか、鈍痴《どじ》め肴《さかな》で酒が飲めるか、小兼《こかね》春吉《はるきち》お房《ふさ》蝶子《ちょうこ》四の五の
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