取らぬとあるに強いはせじ、あまりといえば人情なき奴、ああありがとうござりますると喜び受けてこの中《うち》の仕様を一所二所《ひととこふたとこ》は用いし上に、あの箇所はお蔭でうもう行きましたと後で挨拶《あいさつ》するほどのことはあっても当然なるに、開《あ》けて見もせず覗《のぞ》きもせず、知れきったると云わぬばかりに愛想も菅《すげ》もなく要らぬとは、汝十兵衛よくも撥《は》ねたの、この源太がした図の中に汝の知ったもののみあろうや、汝《うぬ》らが工風の輪の外に源太が跳《おど》り出ずにあろうか、見るに足らぬとそちで思わば汝《おのれ》が手筋も知れてある、大方高の知れた塔建たぬ前から眼に暎《うつ》って気の毒ながら批難《なん》もある、もう堪忍の緒も断《き》れたり、卑劣《きたな》い返報《かえし》はすまいなれど源太が烈《はげ》しい意趣|返報《がえし》は、する時なさでおくべきか、酸くなるほどに今までは口もきいたがもうきかぬ、一旦思い捨つる上は口きくほどの未練ももたぬ、三年なりとも十年なりとも返報《しかえし》するに充分なことのあるまで、物蔭から眼を光らして睨みつめ無言でじっと待っててくりょうと、気性が違えば思わ
前へ 次へ
全143ページ中92ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング