れほどに深くも思い寄らなんだが、汝が我の対面《むこう》にたったその意気張りから、十兵衛に塔建てさせ見よ源太に劣りはすまいというか、源太が建てて見せくりょう何十兵衛に劣ろうぞと、腹の底には木を鑚《き》って出した火で観《み》る先の先、我意はなんにもなくなったただよくできてくれさえすれば汝も名誉《ほまれ》我も悦び、今日はこれだけ云いたいばかり、ああ十兵衛その大きな眼を湿《うる》ませて聴《き》いてくれたか嬉しいやい、と磨《みが》いて礪《と》いで礪ぎ出した純粋《きっすい》江戸ッ子粘り気なし、一《ぴん》でなければ六と出る、忿怒《いかり》の裏の温和《やさし》さもあくまで強き源太が言葉に、身動《みじろ》ぎさえせで聞きいし十兵衛、何も云わず畳に食いつき、親方、堪忍《かに》して下され口がきけませぬ、十兵衛には口がきけませぬ、こ、こ、この通り、ああありがとうござりまする、と愚かしくもまた真実《まこと》にただ平伏《ひれふ》して泣きいたり。
其二十二
言葉はなくても真情《まこと》は見ゆる十兵衛が挙動《そぶり》に源太は悦び、春風|湖《みず》を渡って霞《かすみ》日に蒸すともいうべき温和の景色を面にあ
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