お慈悲深い上人様のありがたさにつくづく我折って帰って来たが、十兵衛、過日《こないだ》の云い過ごしは堪忍《かに》してくれ、こうした我の心意気がわかってくれたら従来《いままで》通り浄《きよ》く睦《むつ》まじく交際《つきあ》ってもらおう、一切がこう定まって見れば何と思った彼《か》と思ったは皆夢の中の物詮議、後に遺《のこ》して面倒こそあれ益《やく》ないこと、この不忍の池水にさらりと流して我も忘りょう、十兵衛|汝《きさま》も忘れてくれ、木材《きしな》の引合い、鳶人足《とび》への渡りなんど、まだ顔を売り込んでいぬ汝にはちょっとしにくかろうが、それらには我の顔も貸そうし手も貸そう、丸丁《まるちょう》、山六《やまろく》、遠州屋《えんしゅうや》、いい問屋《といや》は皆|馴染《なじみ》でのうては先方《さき》がこっちを呑んでならねば、万事|歯痒《はがゆ》いことのないよう我を自由に出しに使え、め組の頭《かしら》の鋭次《えいじ》というは短気なは汝も知って居るであろうが、骨は黒鉄《くろがね》、性根玉は憚《はばか》りながら火の玉だと平常《ふだん》云うだけ、さてじっくり頼めばぐっと引き受け一寸|退《の》かぬ頼もしい男
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