のとおりこれを削れあれを挽《ひ》き割れと使わるるなら嬉しけれど、なまじ情がかえって悲しい、汝も定めてわからぬ奴と恨みもしょうが堪忍《かに》してくれ、ええ是非がない、わからぬところが十兵衛だ、ここがのっそりだ、馬鹿だ、白痴漢《たわけ》だ、何と云われても仕方はないわ、ああッ火も小さくなって寒うなった、もうもう寝てでもしまおうよ、と聴《き》けば一々道理の述懐。お浪もかえす言葉なく無言となれば、なお寒き一室《ひとま》を照らせる行燈《あんどん》も灯花《ちょうじ》に暗うなりにけり。
其十九
その夜は源太床に入りてもなかなか眠らず、一番鶏《いちばんどり》二番鶏を耳たしかに聞いて朝も平日《つね》よりははよう起き、含嗽手水《うがいちょうず》に見ぬ夢を洗って熱茶一杯に酒の残り香を払う折しも、むくむくと起き上ったる清吉|寝惚眼《ねぼれめ》をこすりこすり怪訝顔《けげんがお》してまごつくに、お吉ともども噴飯《ふきだ》して笑い、清吉|昨夜《ゆうべ》はどうしたか、と嬲《なぶ》れば急にかしこまって無茶苦茶に頭を下げ、つい御馳走になり過ぎていつか知らず寝てしまいました、姉御、昨夜|私《わっち》は何か悪い
前へ
次へ
全143ページ中74ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング