《たるきわ》りも我《おれ》がする日には我の勝手、どこからどこまで一寸たりとも人の指揮《さしず》は決して受けぬ、善いも悪いも一人で背負《しょ》って立つ、他《ひと》の仕事に使われればただ正直の手間取りとなって渡されただけのことするばかり、生意気な差し出口は夢にもすまい、自分が主でもない癖に自己《おの》が葉色を際立てて異《かわ》った風を誇《ほこ》り顔《が》の寄生木《やどりぎ》は十兵衛の虫が好かぬ、人の仕事に寄生木となるも厭ならわが仕事に寄生木を容《い》るるも虫が嫌えば是非がない、和《やさ》しい源太親方が義理人情を噛《か》み砕いてわざわざ慫慂《すすめ》て下さるは我にもわかってありがたいが、なまじい我の心を生かして寄生木あしらいは情ない、十兵衛は馬鹿でものっそりでもよい、寄生木になって栄えるは嫌いじゃ、矮小《けち》な下草になって枯れもしょう大樹《おおき》を頼まば肥料《こやし》にもなろうが、ただ寄生木になって高く止まる奴らを日ごろいくらも見ては卑しい奴めと心中で蔑視《みさ》げていたに、今我が自然親方の情に甘えてそれになるのはどうあっても小恥かしゅうてなりきれぬわ、いっそのことに親方の指揮《さしず》
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