泣き出し、ああ情ない親方、私を酔漢《よっぱらい》あしらいは情ない、酔ってはいませぬ、小蝶なんぞは飲《た》べませぬ、そういえばあいつの面《つら》がどこかのっそりに似て居るようで口惜しくて情ない、のっそりは憎い奴、親方の対《むこ》うを張って大それた、五重の塔を生意気にも建てようなんとは憎い奴憎い奴、親方が和《やさ》し過ぎるので増長した謀反人め、謀反人も明智《あけち》のようなは道理《もっとも》だと伯龍《はくりゅう》が講釈しましたがあいつのようなは大悪|無道《ぶどう》、親方はいつのっそりの頭を鉄扇で打《ぶ》ちました、いつ蘭丸《らんまる》にのっそりの領地を与《や》ると云いました、私は今にもしもあいつが親方の言葉に甘えて名を列《なら》べて塔を建てれば打捨《うっちゃ》ってはおけませぬ、擲《たた》き殺して狗《いぬ》にくれますこういうように擲き殺して、と明徳利《あきどくり》の横面いきなり打《たた》き飛ばせば、砕片《かけら》は散って皿小鉢|跳《おど》り出すやちんからり。馬鹿野郎め、と親方に大喝されてそのままにぐずりと坐《すわ》りおとなしく居るかと思えば、散らかりし還原海苔《もどしのり》の上に額おしつけはや
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