和《ものやさ》しく、清や汝《てめえ》喧嘩は時のはずみで仕方はないが気の毒とおもったら謝罪《あやま》っておけ、鉄が親の気持もよかろし汝の寝覚めもよいというものだと心づけて下すったその時は、ああどうしてこんなに仁慈《なさけ》深かろとありがたくてありがたくて私は泣きました、鉄に謝罪るわけはないが親方の一言に堪忍《がまん》して私も謝罪りに行きましたが、それから異《おつ》なものでいつとなく鉄とは仲好しになり、今ではどっちにでもひょっとしたことのあれば骨を拾ってやろうかもらおうかというぐらいの交際《つきあい》になったも皆親方のお蔭《かげ》、それに引き変え茶袋なんぞはむやみに叱言《こごと》を云うばかりで、やれ喧嘩をするな遊興《あそび》をするなとくだらぬことを小うるさく耳の傍《はた》で口説きます、ハハハいやはや話になったものではありませぬ、え、茶袋とは母親《おふくろ》のことです、なに酷《ひど》くはありませぬ茶袋でたくさんです、しかも渋をひいた番茶の方です、あッハハハ、ありがとうござります、もう行きましょう、え、また一本|燗《つ》けたから飲んで行けとおっしゃるのですか、ああありがたい、茶袋だと此方《こち
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