《ふく》んで十六間|真逆《まさか》しまに飛ぶところ、欄干《てすり》をこう踏み、風雨を睨《にら》んであれほどの大揉《おおも》めの中にじっと構えていたというが、その一念でも破壊《こわ》るまい、風の神も大方|血眼《ちまなこ》で睨まれては遠慮が出たであろうか、甚五郎《じんごろう》このかたの名人じゃ真の棟梁じゃ、浅草のも芝のもそれぞれ損じのあったに一寸一分|歪《ゆが》みもせず退《ず》りもせぬとはよう造ったことの。いやそれについて話しのある、その十兵衛という男の親分がまた滅法えらいもので、もしもちとなり破壊れでもしたら同職《なかま》の恥辱《はじ》知合いの面汚し、汝《うぬ》はそれでも生きて居らりょうかと、とても再び鉄槌《かなづち》も手斧《ちょうな》も握ることのできぬほど引っ叱《しか》って、武士で云わば詰腹同様の目に逢わしょうと、ぐるぐるぐる大雨を浴びながら塔の周囲《まわり》を巡っていたそうな。いやいや、それは間違い、親分ではない商売上敵《しょうばいがたき》じゃそうな、と我れ知り顔に語り伝えぬ。
 暴風雨のために準備《したく》狂いし落成式もいよいよ済みし日、上人わざわざ源太を召《よ》びたまいて十兵衛と
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