鋭くおめき叫んで遮《しゃ》に無に暴威を揮うほどに、神前寺内に立てる樹も富家《ふうか》の庭に養《か》われし樹も、声振り絞って泣き悲しみ、見る見る大地の髪の毛は恐怖に一々|竪立《じゅりつ》なし、柳は倒れ竹は割るる折しも、黒雲空に流れて樫《かし》の実よりも大きなる雨ばらりばらりと降り出せば、得たりとますます暴るる夜叉、垣《かき》を引き捨て塀《へい》を蹴倒し、門をも破《こわ》し屋根をもめくり軒端《のきば》の瓦《かわら》を踏み砕き、ただ一[#(ト)]揉みに屑屋《くずや》を飛ばし二[#(タ)]揉み揉んでは二階を捻《ね》じ取り、三たび揉んでは某寺《なにがしでら》をものの見事に潰《ついや》し崩《くず》し、どうどうどっと鬨《とき》をあぐるそのたびごとに心を冷やし胸を騒がす人々の、あれに気づかいこれに案ずる笑止の様を見ては喜び、居所さえもなくされて悲しむものを見ては喜び、いよいよ図に乗り狼藉《ろうぜき》のあらん限りを逞《たくま》しゅうすれば、八百八町百万の人みな生ける心地せず顔色さらにあらばこそ。
 中にもわけて驚きしは円道為右衛門、せっかくわずかに出来上りし五重塔は揉まれ揉まれて九輪は動《ゆら》ぎ、頂上
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