入りを禁《と》むるか何とかするでござりましょうが、元はといえば清吉が自分の意恨でしたではなし、つまりは此方《こち》のことのため、筋の違った腹立ちをついむらむらとしたのみなれば、妾《わたし》はどうも我夫のするばかりを見て居るわけには行かず、ことさら少しわけあって妾がどうとかしてやらねばこの胸の済まぬ仕誼《しぎ》もあり、それやこれやをいろいろと案じた末に浮んだは一年か半年ほど清吉に此地《こち》退《の》かすること、人の噂も遠のいて我夫の機嫌も治《なお》ったら取り成しようは幾らもあり、まずそれまでは上方あたりに遊んで居るようしてやりたく、路用の金も調《こしら》えて来ましたれば少しなれどもお預け申しまする、どうぞよろしく云い含めて清吉めに与《や》って下さりませ、我夫はあの通り表裏のない人、腹の底にはどう思っても必ず辛く清吉に一旦あたるに違いなく、未練げなしに叱りましょうが、その時何と清吉がたとい云うても取り上げぬは知れたこと、傍から妾が口を出しても義理は義理なりゃしようはなし、さりとて欲でしでかした咎《とが》でもないに男一人の寄りつく島もないようにして知らぬ顔ではどうしても妾が居られませぬ、彼《
前へ 次へ
全143ページ中118ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング