分出入りならぬ由云いに鋭次がところへ行かんとせし矢先であれど、視ればわが子を除いては阿弥陀《あみだ》様よりほかに親しい者もなかるべきか弱き婆のあわれにて、我《われ》清吉を突き放さば身は腰弱弓の弦《つる》に断《き》れられし心地して、在るに甲斐なき生命《いのち》ながらえんに張りもなく的もなくなり、どれほどか悲しみ歎いて多くもあらぬ余生を愚痴の涙《なんだ》の時雨《しぐれ》に暮らし、晴れ晴れとした気持のする日もなくて終ることならんと、思いやれば思いやるだけ憫然《ふびん》さの増し、煙草|捻《ひね》ってつい居るに、婆《ばば》は少しくにじり出で、夜分まいりましてまことに済みませんが、あの少しお願い申したいわけのござりまして、ハイハイ、もう御存知でもござりましょうがあの清吉めがとんだことをいたしましたそうで、ハイハイ、鉄五郎様から大概は聞きましたが、平常《ふだん》からして気の逸《はや》い奴《やつ》で、じきに打《ぶ》つの斫《き》るのと騒ぎましてそのたびにひやひやさせまする、お蔭《かげ》さまで一人前にはなっておりましてもまだ児童《がき》のような真一酷《まいっこく》、悪いことや曲ったことは決してしませぬが取
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