て厭々ながら十兵衛が家|音問《おとず》れ、不慮の難をば訪い慰め、かつは清吉を戒むること足らざりしを謝《わ》び、のっそり夫婦が様子を視《み》るに十兵衛は例の無言三昧、お浪は女の物やさしく、幸い傷も肩のは浅く大したことではござりませねばどうぞお案じ下されますな、わざわざお見舞い下されては実《まこと》に恐れ入りまする、と如才なく口はきけど言葉遣いのあらたまりて、自然《おのず》とどこかに稜角《かど》あるは問わずと知れし胸の中《うち》、もしや源太が清吉に内々含めてさせしかと疑い居るに極まったり。
 ええ業腹《ごうはら》な、十兵衛も大方我をそう視て居るべし、とく時機《とき》の来よこの源太が返報《しかえし》仕様を見せてくれん、清吉ごとき卑劣《けち》な野郎のしたことに何似るべきか、釿《ちょうな》で片耳|殺《そ》ぎ取るごときくだらぬことを我《わ》がしょうや、わが腹立ちは木片《こっぱ》の火のぱっと燃え立ちすぐ消ゆる、堪《こら》えも意地もなきようなることでは済まさじ承知せじ、今日の変事は今日の変事、わが癇癪はわが癇癪、まるで別なり関係《かかりあい》なし、源太がしようは知るとき知れ悟らする時悟らせくれんと、裏
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