までいしことなれど、聞けばなるほどどうあっても堪忍《がまん》のならぬのっそりの憎さ、生命《いのち》と頼むわが親方に重々恩を被《き》た身をもって無遠慮過ぎた十兵衛めが処置振り、あくまで親切真実の親方の顔踏みつけたる憎さも憎しどうしてくりょう。
ムム親方と十兵衛とは相撲《すもう》にならぬ身分の差《ちが》い、のっそり相手に争っては夜光の璧《たま》を小礫《いしころ》に擲《ぶ》つけるようなものなれば、腹は十分立たれても分別強く堪《こら》えて堪えて、誰にも彼にも欝憤《うっぷん》を洩《も》らさず知らさず居らるるなるべし、ええ親方は情ない、ほかの奴はともかく清吉だけには知らしてもよさそうなものを、親方と十兵衛では此方《こち》が損、我《おれ》とのっそりなら損はない、よし、十兵衛め、ただ置こうやと逸《はや》りきったる鼻先思案。姉御、知らぬ中は是非がない、堪忍《かに》して下され、様子知っては憚《はばか》りながらもう叱られてはおりますまい、この清吉が女郎買いの供するばかりを能の野郎か野郎でないか見ていて下され、さようならば、と後声《しりごえ》烈《はげ》しく云い捨てて格子戸《こうしど》がらり明けっ放し、草履《
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