も著しい変化を来して、昔の様に山上で賭博を公開する様なことは出来なくなり、各地共博奕は衰退の気運に向つて、先に公開的であつたものは今は奥座敷的になつてゐる。之れは一つは警察制度と関係をして居る。即ち昔の博徒の或者などは、一方で公儀の御用殊に警察の用を足して居て、夫れが引続いて明治に至つた。然るに近来は警察の方針が全く違つて来て、あゝ云ふ性質の者はどし/\圧迫して止まぬから、侠客は益※[#「※」は二の字点、第3水準1−2−22、201−6]窮境に居るが、自分は斯《こん》なに苦める結果は何様変形するかと危み思ふ。夫れは余談であるが、先づ大名や武士が無くなつて人入れの必要も無くなつて、其の方面の侠客は亡せ、賭博の公開が出来ぬやうになつて、在来の姿で往くことは出来ぬので博徒の巨豪は尽きて了つた。然し講釈師が之を唯一の材料として、国民少くとも市井の人※[#「※」は二の字点、第3水準1−2−22、201−10]の元気精神を鼓舞することは暫く止むまい。又た事実に於ても此侠客気質の幾部分は、形骸を土木の労働者、鉱山の人夫などに止《とゞ》めて暫らくは存在しやう。彼等の間には彼等土木業者鉱夫の如きものの間
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