人入れといふではないが)なども却※[#「※」は二の字点、第3水準1−2−22、200−9]《なか/\》名高く、彼は数年前に死んだが、之れなどは先づ侠客の打止めであらう。侠客も一度講釈師の手に懸ると、何でも火花を散らして戦つてばかりゐるやうになるが、皆が皆さうと云ふ事は無い。互に時勢の差、境遇の差に連れ得意の方面の其の特長を発揮して居るものゝ、其中に大をなして居る者は必ず張良、陳平の徒が多く、水火を踏んで辞せず、剣戟の林に入つて退かざる者は、寧ろ第三流第四流に居る処の樊※[#「※」は「くちへん」+「會」、読みは「カイ」、第3水準1−15−25、200−13]、鯨布の徒である。之によつて見ても、若し侠客の本領は此の殺伐の点にのみ存する様に見るならば夫れは大なる間違ひである。たとへば石定などは釣が非常に好きで能く片舟忘機の楽を取つたものだが、船頭等にさへ其の物やさしい、察しのよい呼吸が如何にも穏かなのをなつかしがられた程であつた。然し当人は東京の盛り場を大抵其の縄張り地内として、その勢力の大したものなるは、其の葬の日に歌舞伎座を使用したに照してもわかる。
其処で今日になると、制度も社会状態
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