しても、表面だけは決して前者のやうな殺伐な振舞が無い、極めて穏かである。たゞ其の全精神は責任の完了、義務の負担を敢てして一歩も後へ退かぬといふことにある。国定忠次、飯岡助五郎、清水次郎長抔は前者の鷙悍なるものであるが、相政などになると後者の雄なるもので、自然其のやり口も形も違つて居る。然し第一流に居る者は大抵穏やかな、思慮も大きくて落着きのある人間で持つて居る。次郎長の如きは、賭場を或所で開く、勝つた人が大金を持つて帰ると途中に危険が多い、夫れを次郎長が心配して少しも危険の無いやうに子分の勇者をして之を護らしめ、行き届いて客人に色※[#「※」は二の字点、第3水準1−2−22、200−6]な世話をしたので、益※[#「※」は二の字点、第3水準1−2−22、200−6]侠名が隆※[#「※」は二の字点、第3水準1−2−22、200−6]と揚つたといふことである。又た後者になると、そんな華※[#「※」は二の字点、第3水準1−2−22、200−7]しい処が無いが、矢張り大勢の子分に親分と立てられるには夫れ相応の力量人格がなければならぬ。紺屋町の相政などは其方で名を為した。又た極く近いところの石定(
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