ち》は、ややもすれば年老《としお》いて女の役の無くなる頃《ころ》に臨《のぞ》むと奇妙《きみょう》にも心状《こころ》が焦躁《じれ》たり苛酷《いらひど》くなったりしたがるものであるから、この女もまたそれ等《ら》の時に臨んでいたせいででもあろうか、いかに源三のした事が気に入らないにせよ、随分《ずいぶん》尋常外《なみはず》れた責めかたである。
最初は仕方が無いと諦めて打たれた。二度目は情無いと思いながら打たれた。三度目四度目になれば、口惜しいと思いながら打たれた。それから先はもう死んだ気になってしまって打たれていたが、余りいつまでも打たれている中《うち》に障《ささ》えることの出来ない怒《いかり》が勃然《ぼつぜん》として骨々《ほねぼね》節々《ふしぶし》の中から起って来たので、もうこれまでと源三は抵抗《ていこう》しようとしかけた時、自分の気息《いき》が切れたと見えて叔母は突き放って免《ゆる》した。そこで源三は抵抗もせずに、我を忘れて退いて平伏《ひれふ》したが、もう死んだ気どころでは無い、ほとんど全く死んでいて、眼には涙も持たずにいた。
その夜源三は眠《ねむ》りかねたが、それでも少年の罪の無さに
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