、補助5092、76−12]《たけのかわ》は幾条《いくすじ》にも割《わ》れ裂《さ》ける、それでもって打たれるので※[#「竹かんむり+擇」、補助5092、76−12]《かわ》の裂目のひりひりしたところが烈《はげ》しく触《さわ》るから、ごくごく浅い疵《きず》ではあるが松葉《まつば》でも散らしたように微疵《かすりきず》が顔へつく。そこへ塩気《しおけ》がつく、腥気《なまぐさっけ》がつく、魚肉《にく》が迸裂《はぜ》て飛んで額際《ひたいぎわ》にへばり着いているという始末、いやはや眼も当てられない可厭《いや》な窘《いじ》めようで、叔母のする事はまるで狂気《きちがい》だ。もちろん源三は先妻の縁引きで、しかも主人《あるじ》に甚《ひど》く気に入っていて、それがために自分がここへ養子に入れて、生活状態《くらしざま》の割には山林《やま》やなんぞの資産の多いのを譲《ゆず》り受けさせようと思っている我が甥がここへ入れないのであるから、憎《にく》いにはあくまで憎いであろうが、一つはこの女の性質が残忍《ざんにん》なせいでもあろうか、またあるいは多くの男に接したりなんぞして自然の法則を蔑視《べっし》した婦人等《おんなた
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