布子《ふるぬのこ》の、しかもお坊《ぼう》さんご成人と云いたいように裾短《すそみじか》で裄短《ゆきみじか》で汚《よご》れ腐《くさ》ったのを素肌《すはだ》に着て、何だか正体の知れぬ丸木《まるき》の、杖《つえ》には長く天秤棒《てんびんぼう》には短いのへ、五合樽《ごんごうだる》の空虚《から》と見えるのを、樹《き》の皮を縄《なわ》代《がわ》りにして縛《くく》しつけて、それを担《かつ》いで、夏の炎天《えんてん》ではないからよいようなものの跣足《すあし》に被《かぶ》り髪《がみ》――まるで赤く無い金太郎《きんたろう》といったような風体《ふうてい》で、急足《いそぎあし》で遣《や》って来た。
 すると路《みち》の傍《そば》ではあるが、川の方へ「なだれ」になっているところ一体に桑《くわ》が仕付《しつ》けてあるその遥《はるか》に下の方の低いところで、いずれも十三四という女の児が、さすがに辺鄙《ひな》でも媚《なまめ》き立つ年頃《としごろ》だけに紅《あか》いものや青いものが遠くからも見え渡る扮装《つくり》をして、小籃《こかご》を片手に、節こそ鄙《ひな》びてはおれど清らかな高い徹《とお》る声で、桑の嫩葉《わかば》を
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