》られるから、ハイと云って釣には出たけれども、どうしたって日が悪いのだもの、釣れやしないのさ。夕方まで骨を折って、足の裏が痛くなるほど川ん中をあっちへ行ったりこっちへ行ったりしたけれども、とうとう一尾《いっぴき》も釣れずに家へ帰ると、サア怒《おこ》られた怒られた、こん畜生《ちくしょう》こん畜生と百ばかりも怒鳴《どな》られて、香魚《あゆ》や山※[#「魚へん+完」、第4水準2−93−48、58−7]《やまめ》は釣れないにしても雑魚《ざこ》位釣れない奴があるものか、大方遊んでばかりいやがったのだろう、この食《く》い潰《つぶ》し野郎《やろう》めッてえんでもって、釣竿を引奪《ひったく》られて、逃《に》げるところを斜《はす》に打《ぶ》たれたんだ。切られたかと思ったほど痛かったが、それでも夢中《むちゅう》になって逃げ出すとネ、ちょうど叔父《おじ》さんが帰って来たので、それで済《す》んでしまったよ。そうすると後で叔父さんに対《むか》って、源三はほんとに可愛《かわい》い児ですよ、わたしが血の道で口が不味《まず》くってお飯《まんま》が食べられないって云いましたらネ、何か魚でも釣って来てお菜《さい》にしてあ
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