張らせて威張《いば》って馬に騎《の》っている官人《かんじん》のようなものもあり、跣足《はだし》で柳条《りゅうじょう》に魚の鰓《あぎと》を穿《うが》った奴をぶらさげて川から上《あが》って来たらしい漁夫もあり、柳がところどころに翠烟《すいえん》を罩《こ》めている美しい道路を、士農工商|樵漁《しょうぎょ》、あらゆる階級の人※[#二の字点、1−2−22]が右徃左徃《うおうさおう》している。綺錦《ききん》の人もあれば襤褸《らんる》の人もある、冠《かぶ》りものをしているのもあれば露頂《ろちょう》のものもある。これは面白い、春江《しゅんこう》の景色に併せて描いた風俗画だナと思って、また段※[#二の字点、1−2−22]に燈《ともしび》を移して左の方へ行くと、江岸がなだらになって川柳が扶疎《ふそ》としており、雑樹《ぞうき》がもさもさとなっているその末には蘆荻《ろてき》が茂っている。柳の枝や蘆荻の中には風が柔らかに吹いている。蘆《あし》のきれ目には春の水が光っていて、そこに一|艘《そう》の小舟が揺れながら浮いている。船は※[#「竹かんむり/遽」、80−1]※[#「竹かんむり/除」、80−1]《あじろ》を編
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