てるように警告した。大噐晩成先生は一[#(ト)]たまりもなく浮腰《うきごし》になってしまった。
ハイ、ハイ、御親切に、有難うございます。
ト少しドギマギして、顫《ふる》えていはしまいかと自分でも気が引けるような弱い返辞をしながら、慌《あわ》てて衣を着けて支度をした。勿論少し大きな肩から掛ける鞄《カバン》と、風呂敷包《ふろしきづつみ》一ツ、蝙蝠傘《こうもり》一本、帽子、それだけなのだから直《すぐ》に支度は出来た。若僧は提灯を持って先に立った。この時になって初めてその服装《みなり》を見ると、依然として先刻《さっき》の鼠の衣だったが、例の土間のところへ来ると、そこには蓑笠《みのかさ》が揃えてあった。若僧は先ず自《みずか》ら尻を高く端折《はしょ》って蓑を甲斐※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]《かいがい》しく手早く着けて、そして大噐氏にも手伝って一ツの蓑を着けさせ、竹の皮笠《かわがさ》を被《かぶ》せ、その紐《ひも》を緊《きび》しく結んでくれた。余り緊しく結ばれたので口を開くことも出来ぬ位で、随分痛かったが、黙って堪えると、若僧は自分も笠を被《かぶ》って、
サア、
と
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