。仙道諸将を走らせ、蘆名を逐って会津を取ったところで、部下の諸将等が大《おおい》に城を築き塁を設けて、根を深くし蔕《へた》を固くしようという議を立てたところ、流石は後に太閤《たいこう》秀吉をして「くせ者」と評させたほどの政宗だ、ナニ、そんなケチなことを、と一笑に附してしまった。云わば少しばかり金が出来たからとて公債を買って置こうなどという、そんな蝨《しらみ》ッたかりの魂魄《たましい》とは魂魄が違う。秀吉、家康は勿論の事、政宗にせよ、氏郷にせよ、少し前の謙信にせよ、信玄にせよ、天下麻の如くに乱れて、馬烟《うまげむり》や鬨《とき》の声、金鼓《きんこ》の乱調子、焔硝《えんしょう》の香、鉄と火の世の中に生れて来た勝《すぐ》れた魂魄はナマヌルな魂魄では無い、皆いずれも火の玉だましいだ、炎々烈々として已《や》むに已まれぬ猛※[#「諂のつくり+炎」、第3水準1−87−64]《もうえん》を噴き出し白光を迸発《ほうはつ》させているのだ。言うまでも無く吾《わ》が光を以て天下を被《おお》おう、天下をして吾が光を仰がせよう、と熱《いき》り立って居るのだ。政宗の意中は、いつまで奥羽の辺鄙《へんぴ》に欝々《うつう
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