切って、長やかなる陣刀の鐺《こじり》あたり散らして、寄付《よりつき》の席に居流れたのは、鴻門《こうもん》の会に樊※[#「口+會」、第3水準1−15−25]《はんかい》が駈込んで、怒眼を円《つぶら》に張って項王を睨《にら》んだにも勝ったろう。外面《そとも》は又外面で、士卒各々|兜《かぶと》の緒を緊《し》め、鉄砲の火縄に火をささぬばかりにし、太刀《たち》を取りしぼって、座の中に心を通わせ、イザと云えばオッと応えようと振い立っていた。これでは仮令《たとい》政宗に何の企が有っても手は出せぬ形勢であった。
茶の湯に主と家来とは一緒に招く場合も有るべき訳で、主従といえば離れぬ中である。然し主人と臣下とを如何に茶なればとて同列にすることは其の主に対しては失礼であり、其の臣下に対しては※[#「にんべん+(先+先)/日」、1038−下−25]上《せんじょう》に堪うる能《あた》わざらしむるものであるから、織田|有楽《うらく》の工夫であったか何様であったか、客席に上段下段を設けて、膝突合わすほど狭い室ではあるが主を上段に家来を下段に坐せしむるようにした席も有ったと記《おぼ》えている。主従関係の確立して居た
前へ
次へ
全153ページ中107ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング