馴染|効《がい》でございまして、ちょっとお見立てなさいまし。」
彼は胸を張って顔を上げた。
「そいつは嫌いだ。」
「もし、野暮なようだが、またお慰み。日比谷で見合と申すのではございません。」
「飛んだ見違えだぜ、気取るものか。一ツ大野暮に我輩、此家《ここ》のおいらんに望みがある。」
「お名ざしで?」
「悪いか。」
「結構ですとも、お古い処を、お馴染効でございまして。……」
六
対方《あいかた》は白露《しらつゆ》と極《きま》った……桔梗屋の白露、お職だと言う。……遣手部屋の蚯蚓《みみず》を思えば、什※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そもさん》か、狐塚の女郎花《おみなえし》。
で、この名ざしをするのに、客は妙な事を言った。
「若い衆、註文というのは、お照《てら》しだよ。」
「へい、」
「内に、居るだろう。」
「お照しが居《お》りますえ?」
と解《げ》せない顔色《かおつき》。
「そりゃ、無いことはございませんが、」
「秘《かく》すな、尋常に顕《あらわ》せろ。」と真赤《まっか》な目で睨《にら》んで言った。
「何も秘します事
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