《じかはだ》に縄を掛けるで、藁《わら》なり蓆《むしろ》なりの、花ものの草木を雪囲いにしますだね、あの骨法でなくば悪かんべいと、お客様の前《めえ》だけんど、わし一応はいうたれども、丸太棒めら。あに、はい、墓さ苞入《つといり》に及ぶもんか、手間|障《ざい》だ。また誰も見ていねえで、構いごとねえだ、と吐《こ》いての。
 和尚様は今日は留守なり、お納所《なっしょ》、小僧も、総斎《そうどき》に出さしった。まず大事ねえでの。はい、ぐるぐるまきのがんじがらみ、や、このしょで、転がし出した。それさ、その形《かた》でがすよ。わしさ屈腰《かがみごし》で、膝はだかって、面《つら》を突出す。奴等《やつら》三方からかぶさりかかって、棒を突挿そうとしたと思わっせえまし。何と、この鼻の先、奴等の目の前へ、縄目へ浮いて、羽さ弾《はじ》いて、赤蜻蛉が二つ出た。
 たった今や、それまでというものは、四人八ツの、団栗目《どんぐりまなこ》に、糠虫《ぬかむし》一疋入らなんだに、かけた縄さ下から潜《くぐ》って石から湧《わ》いて出たはどうしたもんだね。やあやあ、しっしっ、吹くやら、払いますやら、静《じっ》として赤蜻蛉が動かねえとな
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