縷紅新草
泉鏡花
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)蜻蛉《とんぼ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大川|縁《べり》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]
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一
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あれあれ見たか、
あれ見たか。
二つ蜻蛉《とんぼ》が草の葉に、
かやつり草に宿をかり、
人目しのぶと思えども、
羽はうすものかくされぬ、
すきや明石《あかし》に緋《ひ》ぢりめん、
肌のしろさも浅ましや、
白い絹地の赤蜻蛉。
雪にもみじとあざむけど、
世間稲妻、目が光る。
あれあれ見たか、
あれ見たか。
[#ここで字下げ終わり]
「おじさん――その提灯《ちょうちん》……」
「ああ、提灯……」
唯今《ただいま》、午後二時半ごろ。
「私が持ちましょう、磴《いしだん》に打撞《ぶつか》りますわ。」
一肩上に立った、その肩も裳《すそ》も、嫋《しなやか》な三十ばかりの女房が、白い手
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