いていても、塞《ふさ》いでいても分らんのうです。
 私は弁舌は拙《まず》いですけれども、膃肭臍は確《たしか》です。膃肭臍というものは、やたらむたらにあるものではない。東京府下にも何十人売るものがあるかは知らんですがね、やたらむたらあるもんか。」
 と、何かさも不平に堪えず、向腹《むかっぱら》を立てたように言いながら、大出刃の尖《さき》で、繊維を掬《すく》って、一角《ウニコール》のごとく、薄くねっとりと肉を剥《は》がすのが、――遠洋漁業会社と記した、まだ油の新しい、黄色い長提灯《ながぢょうちん》の影にひくひくと動く。
 その紫がかった黒いのを、若々しい口を尖《とが》らし、むしゃむしゃと噛んで、
「二頭がのは売ってしもうたですが、まだ一頭、脳味噌もあるですが。脳味噌は脳病に利くンのですが、膃肭臍の効能は、誰でも知っている事で言うがものはない。
 疑わずにお買い下さい、まだ確《たしか》な証拠というたら、後脚の爪ですが、」
 ト大様に視《なが》めて、出刃を逆手《さかて》に、面倒臭い、一度に間に合わしょう、と狙って、ずるりと後脚を擡《もた》げる、藻掻《もが》いた形の、水掻《みずかき》の中に、空《
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